第2章・税金と制度

贈与のきほん。年110万円の非課税と、知らないと損する「名義預金」「7年ルール」

親から子へ、祖父母から孫へお金を渡すと、贈与⁠になります。贈与には税金がかかることがありますが、ルールを知っていれば、多くの家庭ではそれほどむずかしくありません。

ただ、知らないうちに「あげたつもりはないのに税金がかかる」「贈与したはずなのに認められない」⁠ということも起きます。この記事では、ふつうの家庭で知っておきたいところだけをまとめます。

この記事でわかること 年110万円の非課税のしくみ/税金がかからないお金/名義預金と7年ルール/子どもへの贈与の考え方

1. 1年に110万円までなら、税金はかからない

贈与税は、もらった人⁠が払う税金です。1月1日から12月31日までの1年間にもらった合計から、110万円を差し引けます⁠(暦年課税)。

  • 110万円以下なら、税金はかからず、申告もいらない
  • 110万円はもらう人ごと⁠。父と母から100万円ずつもらうと、合計200万円なので、90万円分に税金がかかる
  • 110万円を超えたら、翌年の2月1日〜3月15日に、もらった人が申告する

たとえば、18歳以上の人が親から1年に200万円もらうと、(200万円 − 110万円)× 10% = 9万円⁠の贈与税がかかります。

2. そもそも税金がかからないお金

家族の間のお金のやりとりは、何でも贈与になるわけではありません。

  • 生活費や教育費を、必要なときにそのつど払う:親が子どもの学費や家賃を、そのたびに払うのは贈与税がかかりません
  • ふつうのお祝い:結婚祝いや入学祝いなど、常識の範囲のもの
  • 夫婦の生活費:毎月の暮らしのお金を、ふたりで出し合うのはふつうのこと

ただし、「教育費として、まとめて1,000万円を先に渡す」のように、使う前にまとめて渡すと、贈与になります。

必要なときに、そのつど払う。これがいちばんシンプルで、税金もかからない。

3. 気をつけたい「名義預金」

子どもの名前の口座に、親が毎年お金を入れて貯めておく。よくあることですが、ここに落とし穴があります。

  • 子どもが口座のことを知らない
  • 通帳やカード、印かんを親が持っている
  • 子どもが自由に使えない

こうした口座は、名前が子どもでも、中身は親のお金⁠とみなされることがあります。これを名義預金⁠といいます。親が亡くなったときに、親の財産として相続税の対象になります。

贈与は、あげる人の「あげます」と、もらう人の「もらいます」の両方⁠がそろって成り立ちます。子どもに贈与するなら、

  • 贈与契約書⁠を作っておく(日付・金額・名前を書いて、両方が署名)
  • 口座の管理を、子どもが自分でできるようにしていく
  • 銀行の振り込みで渡し、記録を残す

ことが大切です。

4. 「毎年同じ額」には注意

「毎年100万円を10年間あげる」と最初に決めて渡すと、はじめから1,000万円をあげる約束だったとみなされ、まとめて贈与税がかかることがあります(定期贈与)。

毎年、その年ごとに贈与を決めて、金額や時期を少しずつ変えておくと安心です。

5. 亡くなる前7年の贈与は、相続に足し戻される

亡くなる前の一定の期間にした贈与は、相続財産に足し戻して、相続税を計算します。この期間が、2024年1月以降の贈与から、3年から7年に延びました⁠(延びた4年分は、合計100万円までは足し戻されません)。

「亡くなる直前にまとめて贈与して、相続税を減らす」ことは、むずかしくなっています。贈与をするなら、早めに、少しずつ⁠が基本です。

なお、相続税は、3,000万円+600万円×相続する人の数⁠までは、かかりません。多くの家庭では、相続税そのものがかからないので、むりに贈与で減らす必要はありません(⁠「相続の基本」⁠)。

6. 大きな額を渡すときの制度

制度 内容 いつまで
相続時精算課税 60歳以上の親・祖父母から、18歳以上の子・孫へ。累計2,500万円まで贈与税がかからず、亡くなったときに相続税で精算。2024年からは、別に年110万円までは足し戻さない 期限なし
住宅を買うお金の非課税 親や祖父母から、家を買うお金をもらうとき。省エネなどの住宅は1,000万円、それ以外は500万円まで 2026年12月31日までの贈与
結婚・子育て資金の一括贈与 1,000万円まで 2027年3月31日まで
教育資金の一括贈与 1,500万円まで 2026年3月31日で終了

相続時精算課税は、一度選ぶと、その人からの贈与は元の110万円のやり方(暦年課税)にもどれません⁠。選ぶ前に、税理士などに相談するのがおすすめです。

7. 子どものNISAに入れるお金も、贈与

2027年から始まるこどもNISA⁠(⁠こどもNISAの記事⁠)は、1年に60万円まで入れられます。このお金を親や祖父母が出すと、それは子どもへの贈与⁠です。年60万円なら110万円の範囲におさまりますが、ほかにも祖父母からお金をもらっている年は、合計で考えます。

8. 大金を残すより、お金の育て方を伝える

子どもにたくさんのお金を残してあげたい、と思う人は多いと思います。でも、大きなお金を渡すより、お金の貯め方・使い方・増やし方を伝える⁠ほうが、子どもの力になる。わたしはそう考えています。

これからの子どもの世代は、人口が減り、高齢者を支える負担が大きくなります。そのハンデを少しやわらげるくらいのお金は残してもいい。でも、それ以上に大事なのは、自分で稼ぎ、守り、育てる力です。

まとめ

  • 贈与税は、もらう人ごとに1年110万円まではかからない
  • 生活費や教育費を、必要なときにそのつど払うのは贈与税がかからない
  • 子ども名義の口座でも、親が管理していると「名義預金」として親のお金とみなされる
  • 亡くなる前7年の贈与は相続に足し戻される。贈与するなら早めに少しずつ
  • 教育資金の一括贈与の非課税は、2026年3月で終わった

この記事は一般的なしくみの説明です。税金の扱いは、家庭の事情や法律の改正で変わります。実際に大きな額を贈与するときは、国税庁のホームページや、税理士にご相談ください。

この記事を書いた人:管理人のこつこつ
都内で共働き・子ども1人と犬1匹の会社員。家計と配当の記録を、自分で作ったアプリで計算しています。 くわしいプロフィール