第4章・住まいと車 全8本中の2本目

住宅ローンは年収の何倍まで?「借りられる額」と「借りてもいい額」はちがう。3つの数字を並べて決める

家を買うとき、「住宅ローンは年収の◯倍まで」⁠という話をよく聞きます。でも、その数字をそのまま自分にあてはめるのは危ないと考えています。

銀行が貸してくれる額⁠と、自分が返していける額⁠は、別のものだからです。わが家も都内の戸建てを、変動金利の住宅ローンで買いました(⁠「都内か埼玉か、持ち家か賃貸か」⁠)。

この記事では、「年収の何倍」⁠の正体を確かめたうえで、3つの数字を並べて、借りる額を決める方法⁠を紹介します。

この記事でわかること 「年収の何倍」⁠の数字の正体/銀行が貸してくれる額の決まり方/借りてもいい額の出し方/金利が上がったときの返済額

1. 「年収の何倍」⁠は、みんなが借りた平均

よく出てくる「年収の7倍」⁠といった数字は、住宅金融支援機構の調査がもとになっていることが多いです。フラット35で家を買った人について、家にかかったお金が世帯年収の何倍だったか⁠をまとめたものです。

家の種類 年収倍率
土地を買って家を建てた 7.8倍
新築マンション 7.5倍
建売住宅 6.9倍
注文住宅(土地は持っていた) 6.9倍
中古マンション 5.6倍
中古の戸建て 5.3倍

(住宅金融支援機構「2025年度 フラット35利用者調査」、2026年7月発表)

この数字を見るときは、次の3つに気をつけたいところです。

  • 「借りてよかった額」⁠ではない:実際に買った人の平均で、その人たちが無理なく返せているかは分かりません
  • 年収は夫婦の合計のこともある:「世帯年収」⁠なので、共働きで2人の収入を合わせた家も入っています
  • 借りた額そのものではない:家にかかったお金なので、頭金を入れた人も入れなかった人もふくまれます

つまり「年収の何倍」⁠は、まわりはこれくらいで買っている⁠という目安です。自分がこれだけ借りても大丈夫、という意味ではありません。

2. 銀行が「貸してくれる額」⁠の決まり方

銀行は、主に返済負担率⁠で貸せる額を決めます。年収(額面)⁠のうち、1年間のローンの返済にいくら回るかの割合です。

  • フラット35の基準は、年収400万円以上なら35%⁠まで⁠(400万円未満は30%⁠まで)
  • 計算には、住宅ローンのほかに車のローンやカードローンの返済も入ります
  • 銀行のローンでは、実際の金利ではなく、高めの審査金利⁠(3〜4%⁠ほどが多いと言われます)⁠で計算するのがふつうです

年収700万円⁠の人で計算してみます。フラット35を使った人の平均世帯年収は716万円なので、だいたい平均の人です。

  • 年収700万円 × 35% = 1年に245万円(⁠月に約20.4万円⁠)⁠まで返済にあてられる
  • これを審査金利3.5%・35年であてはめると、約4,900万円⁠まで借りられる計算です

年収の7倍です。1章の「年収倍率」⁠と、ほぼ同じになります。

3. 「借りてもいい額」⁠は、手取りから考える

ここに落とし穴があります。銀行が見ているのは額面の年収⁠です。でも、ローンを返すのは手取り⁠からです。

年収700万円の会社員だと、税金や社会保険料を引いた手取りは、ざっくり530万円ほど⁠です。月に20.4万円を返すと、手取りの約46%⁠がローンに消えます。そこに食費や子どもの教育費、車、固定資産税、家の修繕費がのってきます。

家計の相談では、住宅ローンの返済は手取りの20〜25%⁠まで⁠がひとつの目安と言われます。手取り530万円で計算すると、次のようになります。

手取りに対する返済の割合 月の返済額 金利1%・35年で借りられる額
20% 約8.8万円 約3,130万円
25% 約11.0万円 約3,910万円

銀行が貸してくれる約4,900万円と比べると、1,000万円くらい⁠ちがいます。これが「借りられる額」⁠と「借りてもいい額」⁠の差です。

4. 金利が上がったときの返済額も並べる

変動金利で借りるなら、金利が上がったときの返済額⁠も見ておきたいところです。2026年は日銀が政策金利を1.25%⁠まで上げ、フラット35の金利も10月に過去最高(最低金利3.83%)⁠になりました(⁠「金利が上がると、家計のどこに効く?」⁠)。

4,000万円を35年で借りたときの、毎月の返済額です。金利がずっと同じだった場合で計算しています。

金利 毎月の返済額 35年で払う利息
0.8% 約10.9万円 約590万円
1.0% 約11.3万円 約740万円
1.5% 約12.2万円 約1,140万円
2.0% 約13.3万円 約1,570万円
3.0% 約15.4万円 約2,470万円

金利が1%⁠から2%⁠になるだけで、毎月の返済は約2万円ふえ、35年の利息は800万円以上ふえます。

「手取りの25%⁠で返せる額」⁠も、金利によって変わります。月11.0万円を返す場合、金利1%⁠なら約3,910万円まで借りられますが、3%⁠だと約2,870万円⁠です。金利が上がっても払える額にしておくなら、借りる額はもっと小さくなります。

変動金利の多くは「5年ルール」⁠で、金利が上がってもすぐには返済額が増えません。ただし、利息が減るわけではありません(⁠「変動金利の「5年ルール」⁠と「125%ルール」」⁠)。

5. 3つの数字を並べて、小さいほうで考える

ここまでを1つの表にまとめます。年収700万円・手取り530万円・35年の例です。

見かた 借りられる額
① 銀行が貸してくれる額(年収の35%・審査金利3.5%) 約4,900万円
② 手取りの25%⁠で返せる額(金利1%⁠のまま) 約3,910万円
③ 金利が3%⁠に上がっても、手取りの25%⁠で返せる額 約2,870万円

①は、あくまで上限⁠です。借りる額は②と③のあいだで考えると、金利が上がっても家計がこわれにくくなります。

さらに、次のことも数字に入れておくと安心です。

6. わが家がしていること

わが家は、自作のライフプラン表に住宅ローンを入れて、95歳までのお金の流れを計算しています(⁠「95歳までのライフプラン表を作ったら、老後に使えるお金が「月37万円」⁠と分かった」⁠)。金利が上がったときの返済額や、5年ルールで毎月の支払いがいつ変わるかも入れています。

数字にしておくと、どこまで金利が上がったら家計が苦しくなるか⁠が分かります。借りたあとの繰上返済をどう考えているかは、「住宅ローンの繰上返済は、控除が終わってから考える」⁠に書いています。

まとめ

  • 「年収の何倍」⁠は、みんなが買った平均。自分が返せる額ではない
  • 銀行が貸してくれる額は、額面の年収と審査金利で決まる上限
  • 借りてもいい額は、手取りと家計から逆算する
  • 金利が上がった場合の返済額も並べて、小さいほうの額で考える

この記事は一般的なしくみと計算の例です。審査の基準や金利は銀行によってちがいます。くわしくは借りる銀行にご確認ください。

この記事を書いた人:管理人のこつこつ
都内に住む共働きの会社員。家族は妻と子ども1人、それに犬が1匹。家計と配当の記録を、自分で作ったアプリで計算しています。 くわしいプロフィール